気象・森林・災害の広場 (要約版)
La foret meteorologiqueⅠ
by K気象予報士 2024年(R6年)
ようこそ、 "La foret meteorologique Ⅰ”
要約版(入門編)へ!
http://www.ee.e-mansion.com/~tkubota/index2.html
気候変動のため強雨が増加しています。
どの季節でも大雨による土砂災害や
洪水などに備えましょう。
森林はこのような災害の軽減に重要な役割を持ちます。
引き続き洪水・土砂災害などに(特に強い地震後は)留意ください。
近年、九州など西日本では強い雨が増加傾向にあります。これは気候変動すなわち地球温暖化のために海水面から水蒸気の供給が増加したことや上下層大気の気温差増加に伴う大気の不安定化などが原因と考えられます。 例えば九州地方では、約40年間で年最大時間雨量が20mm/hr程度、年最大日雨量が100mm/day程度も増加している場所があります。この増加傾向はケンドールの順位相関などでは統計的に有意です。また、30mm/hr以上の強い雨の発生頻度にも増加傾向が認められます。
増加の程度の差はありますが、同様のことが2020年7月の熊本県球磨川流域や大分県日田市など2020年九州北部豪雨災害箇所でも認められます。
そして、この結果を(実際の崩壊斜面のFEMやLEMなど数値シミュレーションつまり降雨浸透解析と斜面安定解析を使用して)山地斜面の安全性=斜面安全率評価に適用すると、降雨の増加がない場合よりも5%~30%も斜面が不安定になることが分かっています。この結果は、良好な森林の有無に関係なく生じます。早めの避難が重要です。
また、海水面温度の上昇は、スーパー台風発生や台風が勢力を弱めずに接近・上陸する原因となる他、日本近海で台風が発生して接近上陸までの時間が短くなるなど台風災害の激化につながることが考えられますので、台風に伴う土砂災害発生にも注意しましょう。
大雨で山崩れや土石流から避難する場合は、新型コロナ感染症対策も考慮して、自宅2階や近所の丈夫なコンクリート建物など、普段から指定避難場所以外の安全な場所も探しておき、分散避難を心がけるのが大切です。
大切な森林の役目
~森の役目を考えて見ましょう~
①森林土壌が雨をよく地下に浸透させて、浸食や洪水を防ぎ、渇水の時は地下水・河川の流量の減少を緩和する。 落葉層が地中の水分蒸発を緩和して水源涵養を助けるが、その反面、樹木が水分をかなり多く消費する。<洪水軽減・水源涵養>
②樹冠(葉)と落ち葉や下草などが、雨による地表の浸食を防ぎ、土砂の流出を軽減する。<浸食防止>
③降雨の初期には樹木の土壌水分消費により土の強度が増して、崩壊発生への抵抗力ができる。
⓸根そのものが土を補強する。また、根系が錨のように岩盤に表層を固定するので、浅い崩壊を生じにくくする。=表層崩壊軽減
ただし、比較的風化の進んでいない堅い岩盤の上部など根の深さが一様にそろうような場合は、稀にかえって森林が崩壊を助長する時もある。
⑤強風を防ぐ、気温の変化を緩和する、CO2を長期に一時的に吸収する、大気汚染を軽減する、生態系を維持する、景観を維持する、木材を供給するなど多様な役割を果たす。<多機能>
⑥ただし、急な斜面では強風により木が振動して地盤が緩む場合やそのために崩壊してしまう場合もあります。また、流木の発生源になったり、土壌の浅い急斜面では木の重みが斜面を崩れやすくしたりするなどの防災上マイナスの一面もあります。